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琉球政府文書

布告・布令・指令等(6)通貨の変遷~B円への統一

総務局渉外広報部 文書課「布告・布令・指令等に関する書類」から、米国統治下の琉球列島における通貨制度の変遷のうち、B円への統一に関する布告を紹介します。

米国統治下の沖縄では、米国の通貨であるドルが使用されていました。1972年5月15日の日本復帰の際、ドルから円への通貨交換によって沖縄社会が混乱したことはよく知られていますが、復帰時のみならず、米国統治期には通貨制度がいくたびも変遷しました。ここでは、琉球列島における唯一の通貨としてB円(B型軍票)が指定される1948年までの通貨に関する布告を紹介します。

なお、奄美群島も施政権が日本に返還される1953年12月まで「琉球列島」の一部として米国統治下にあったため、その間の通貨政策は、現在の鹿児島県大島郡にも及んでいました。

 

戦後初期の法定通貨:軍政府特別布告第7号「紙幣両替、外国貿易及び金銭取引」

まず、1946年3月、軍政府特別布告第7号「紙幣両替、外国貿易及び金銭取引」が発せられました。

その第1条「Currency」の第1項で、1946年4月15日から、(1)B円、(2)新発行日本銀行券、(3)5円以上の旧日本銀行券(日本銀行で検印を付して正当な効力を有するもの)を、また第2項では、4月29日から5円未満の旧日本銀行券と硬貨を、法定通貨として有効とするとされました。

複数の通貨が、法定通貨に指定されていたことになります。

同年、軍政府特別布告第11号「通貨、両替、外国貿易及び金銭取引」によって法定通貨は新日本円となり、さらに軍政府特別布告第21号「法定通貨」によって、沖縄群島で、B円が再び法定通貨に指定されるなどの紆余曲折を経て、2年後の1948年7月、琉球列島全域の法定通貨がB円に統一されます。

 

既存通貨の回収:軍政府特別布告第29号「通貨の交換と新通貨の発行」

B円への統一は、まずそれまで流通していた通貨を全て回収し、次にB円を新たに発行してこれに引き換えるという二段階で行われました。

まず、1948年6月28日に、軍政府特別布告第29号「通貨の交換と新通貨の発行」 が出されます。

 

その第1条「Currency / 通貨」で、同年7月16日から7月20日までの期間において、「全日本通貨及びB型軍票」(all Japanese Yen and Type “B” Military Yen)の所持者は、琉球列島内の郵便局及び指定交換所において、同通貨を交換しなければならないとされました。交換期間の終了後、現在流通している通貨は無効となるとされています。

また、第3条「Penalties and Rewards / 賞罰」では、第1項で「交換期間の終了後日本通貨及B型軍票を交換せずに所持すること」は「不法所持」にあたるとして、「1万円以下の罰金又は1年以下の懲役又はその両刑に処しその通貨は没収する」、第2項では、「故意に交換しない者に関する情報を提供し特別軍事法廷に同違反者の逮捕又は定罪を可能ならしめる者」に、「隠匿額の5%にして100円を下らざる報償」を与えるとあり、いわゆる“密告”をも奨励しています。

 

同布告と同日に軍政府が出した下の文書では、通貨交換の方法がより詳細に記載されています。

それによると、通貨の交換方法は、「日本円並にB型軍票の提出に応じて預託証書を発行し、数日後預託証書と引換に新通貨を交付させることを保証する」というものでした。

まず、日本円やB円を指定代行機関に提出し、預託証書を受け取ります。その後、預託証書を預託先に提出して、正当と認定された額に対して1対1の比率で新通貨を受領します。指定代行機関は、沖縄群島では市町村長、北部・南部琉球では各軍政府上席将校によって指定された者となっています。

なお、軍政府特別布告第29号「通貨の交換と新通貨の発行」も上の文書も、新通貨がどのような内容となるかという点には触れていません。

 

新通貨をB円に:軍政府特別布告第30号「標準通貨の確立」

軍政府特別布告第29号「通貨の交換と新通貨の発行」で、既存通貨の交換期間は7月16日から20日までとされましたが、交換終了の翌日にあたる1948年7月21日、軍政府特別布告第30号「標準通貨の確立」が発せられました。

※日本語訳文の日付は、7月20日と誤って記されています。

第1条「Currency / 通貨」では、B円を「琉球列島の唯一の法貨」(the sole legal tender in the Ryukyus)と定めています。

また第2条「Regulations / 規則」は、「法貨として軍政府の定めた通貨の受領を拒否してはいけない」(第1項)、「軍政府の許可書なくして法貨でない通貨と法貨とを交換してはいけない」(第2項)「外国通貨を南西諸島へ輸入若くは南西諸島から輸出することは出来ない」(第3項)などとし、違反すれば「定罪の上一万円以下の罰金又は一年以下の禁錮又はその両刑に処する」としています。

このように、B円への統一は、まず流通している通貨を回収したうえで、新通貨を定めてそれと引き換えるという二段階で行われましたが、牧野浩隆『戦後沖縄の通貨 上』によると、その背景には、琉球列島に流通する貨幣量を軍政府が確認する目的があったとされています。通貨の回収前に、新通貨がB円であることがわかれば、B円所持者が預託証書への交換に応じなくなることが懸念されたようです。

ところで、既存通貨を回収し、法定通貨をB円に統一した軍政府特別布告第29号および30号には、「アメリカ合衆国」(United States of America)の銘のある通貨の所持や譲渡を禁止する条項があったことは注目されます(軍政府特別布告第29号の第2条第1項、同第30号第2条第5項)。その政策は、10年後の通貨のドル切替によって覆されることになります。

ここで取り上げた3つの布告は、『 軍政府特別布告/Military Government Special Proclamation 1945年~1950年 第001号~第044号』(RDAP000032)に含まれています。

参考文献:牧野浩隆「通貨制度」『沖縄大百科事典 中』(沖縄タイムス社、1983年)、牧野浩隆『戦後沖縄の通貨 上』(ひるぎ社、1987年)

 

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