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あの日の沖縄

11月11日 介護の日

 1999年(平成20)に厚生労働省が「国民に介護の啓発を実施するための日」として毎年11月11日を「介護の日」とし、その前後二週間(11月4日から11月17日まで)を「福祉人材確保重点実施期間」と定めています。

 近年、高齢化が進行しており、要介護高齢者の増加や介護期間の長期化、核家族化の進行や介護する家族の高齢化など、要介護高齢者を支えてきた家族をめぐる状況も変化し、従来の老人福祉・老人医療制度による対応には限界がありました。このような社会課題を背景に、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして1996年(平成8)11月に国会へ介護保険法案が提出され、1997年(平成9)12月に「介護保険法」が成立・公布され、2000年(平成12)4月に施行されました。

 

沖縄県の取り組み

 県は1979年(昭和54)8月に社会課の老人部門を独立させ「老人福祉課」を新設して行政の対応を強化しました。また、1982年(昭和57)に制定された「老人保健法」(※1)に基づく「沖縄県老人保健福祉計画」と、介護保険法に基づく「沖縄県介護保険事業支援計画」の2つを「沖縄県高齢者保健福祉計画」として一体的に策定し、諸施策を展開しました。

 現在、2021年度(令和3)から2023年度(令和5)までを計画期間とする「沖縄県高齢者保健福祉計画(第8期)」が策定され、「高齢者だれもが住み慣れた地域で、生き生きと安心して暮らし、お互い支え合う地域社会の実現」という基本理念及び「沖縄県SDGs推進方針」の「誰一人取り残さない」という理念のもと、高齢者がさまざまな場面で活躍できるための支援や、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年(令和7)及び団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者となる2040年(令和22)を見据えたサービス基盤、人的基盤の整備を進めています。

(※1)後期高齢者医療制度の発足に伴い「老人保健法」は廃止され、2008年(平成20) 4月1日新たに施行された「高齢者の医療の確保に関する法律」へ、それ以外の保健事業は「健康増進法」へ移行しました。

 超高齢社会である現在、高齢者の増加とともに介護を必要とする方も増加しています。このような状況もあり、近年では介護も身近になりつつあります。毎年「介護の日」には、各地で介護について理解や認識を深められるイベントなどがおこなわれています。

 

 当館所蔵資料から関連資料の一部を紹介します。

 

 

「医療福祉関係者と面会」1967年5月16日 USCAR広報局写真資料058【0000213543/260CR-32_0555-02

 ジェラルド・ワーナー民政官は米民政府の国民指導員計画(※2)のもと、5月17日に米国に向けて出発する4人の琉球の医療福祉関係者と面会した。 (左から) 整肢療護園の山田之郎園長、沖縄精神薄弱児育成会の山川文雄会長、琉球政府身体障害者更生指導所の武村盛弘所長、 米民政府公衆衛生福祉部福祉関係嘉数能隆氏。1ヶ月間の米国滞在中、身体・知的障害者の介護・治療に関わる機関や、リハビリテーション、社会福祉サービス、医療・福祉行政を視察する(英文和訳)。

 (※2)1950年(昭和25)から1970年(昭和45)にかけて、 琉球列島米国民政府 (USCAR) は、 各分野の専門家の琉球住民を対象にした国民指導員計画 (National Leader Program、 以下 「NLP」 という。) を実施しました。 NLP とは、 ガリオア基金 (Government Appropriation for Relief in Occupied Area Fund, 占領地域救済政府基金)により、 アメリカ陸軍省が主導した占領地域住民対象の人事交流プログラムです。20年間で約400人の琉球住民が国民指導員として渡米研修に派遣されたと言われています。

 

 

沖縄県厚生部社会課「老人福祉統計」1972年度(昭和47)【0000218341】

 復帰前の県内高齢者の状況等が確認できる資料です。1970年(昭和45)12月時点の沖縄のねたきり老人の人数、家族構成別のねたきり老人数、ねたきりの原因などの統計がまとめられています。

 1970年の100歳以上の高齢者は東京、広島についで全国8番目で人口あたりでは沖縄が日本一の長寿県となっています。

 沖縄社会福祉協議会、全琉福祉委員連絡協議会が沖縄のねたきり老人の実態把握とそれにもとづく福祉対策策定に役立てる目的で1970年12月に実施した調査報告『居宅内ねたきり老人実態調査報告書』によると、沖縄の居宅内ねたきり老人数は1,711人で65歳以上老齢人口に占める割合は3.1%、全国平均と比べると低めである一方、沖縄の場合は、単身もしくは配偶者のみの、いわゆる老人だけの世帯率がきわめて高いとし、全琉を6地区に分け、地区別ねたきり老人の発生率をみると、「北部」が4.7%、「中部」が3.1%、「那覇」が1%「南部」が3.6%、「宮古」が3.7%、「八重山」が3.2%となっており、特に「北部」と「那覇」に地域差が認められました。

 「北部」と「宮古」「八重山」の先島と比較した場合、同様な過疎的条件にありながら、「宮古」「八重山」の発生率がそれほど高くないのは、老人を含めた「家族ぐるみ」移住がなされているためであり、それに対し「北部」の場合、老人を村に残したままでの出稼ぎ移住があり、年をとって病気になったら北部の村に帰って行くケースが多く発生率が高くなっており、那覇の低さは、実態把握が困難であることも影響していると思われる、とあります。

 また、全琉の4つの老人ホームには81人の「ねたきり老人」が入所しており、本調査結果から特別養護老人ホームに入所する必要のある老人が相当数おり、ねたきり老人が家庭にいても「しかたがない」といったあきらめ的な感情から医者に診せないなど、さまざま事情があることから、気軽に医療が受けられるための医療対策を提示しています。

 

【参考引用文献】

・沖縄県HP 11月11日は「介護の日」♪♪(福祉人材確保重点実施期間)

・厚生労働省「介護の日」について

・厚生労働省HP介護の日・福祉人材確保重点実施期間

・沖縄県HP沖縄県高齢者保健福祉計画(第8期)について

豊見山 和美「琉球列島米国民政府が実施した「国民指導員計画」について」『沖縄県公文書館研究紀要 第17号』(2015年3月)