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あの日の沖縄

1956年6月9日 USCAR、「プライス勧告」を沖縄住民に伝える

メルヴィン・プライスを委員長とする米国下院軍事委員会特別分科委員会は、1956年(昭和31)6月、沖縄の米軍用地問題に関する報告書を米国議会に提出しました。6月9日、USCAR(琉球列島米国民政府)のモーア民政副長官が、その一部を住民向けに発表しました(全文は6月20日発表)。

 
『プライス勧告』 左(表紙)・右(見開き1ページ目)【0000030365】
 その内容は、沖縄基地について、①制約なき核基地、②アジア各地の地域的紛争に対処する米極東戦略の拠点、③日本やフィリピンの親米政権が倒れた場合のより所としてきわめて重要であるとし、これまでの米軍用地政策を含む米軍支配のあり方を基本的に正しいと認めたものでした。

沖縄の米軍用地問題

 1950年代、朝鮮戦争の勃発や中華人民共和国の成立、米ソ冷戦を背景に、米軍は沖縄における恒久的基地建設を本格化し、軍用地を確保するために「銃剣とブルドーザー」による強制的な土地接収(第二次土地接収)を行いました。
 さらに米国民政府(USCAR)は、1954年(昭和29)3月17日、米陸軍省の「軍用地一括払い」方針を発表しました。一括払いは実質的な土地買い上げにあたるとして、琉球政府立法院は、同年4月30日、「軍用地処理に関する請願決議」を可決しました。この請願の内容は、一括払い反対、適正補償、損害賠償、新規接収反対の「土地を守る四原則」として掲げられるようになりました。 

「軍用地処理に関する請願決議」全文
『軍用土地問題の経緯』行政主席官房情報課編
 pp.100-101【G80001320B】

 1955年(昭和30)5月23日には琉球政府初代行政主席の比嘉秀平ら土地問題渡米折衝団が派遣されました。折衝団の要請により、1955年(昭和30)10月23日、プライスを団長とする米国下院軍事委員会特別分科委員会の調査団が来沖しました。


「ライカムの視察に訪れたプライス下院議員(左は米極東軍司令官兼琉球列島民政長官レムニッツア大将」(1955年10月)【0000112228/08-15-4】
※「ライカム(Rycom)」とは、琉球軍司令部(Ryukyu Command)の略称です。

 この調査団が米国議会に提出した報告書が、いわゆる「プライス勧告」です。この勧告は軍用地料算定の面で譲歩はありましたが、「土地を守る四原則」に基づく沖縄側の要求にこたえるものではありませんでした。
 
 1956年(昭和31)6月20日、沖縄の64市町村(当時)のうち56市町村で一斉に「プライス勧告拒否、四原則貫徹」住民大会が開かれ、20万人余の住民が参加しました。以降も住民の激しい抗議が続き、「島ぐるみ闘争」と呼ばれる運動へ発展していきました。


左:「プライス勧告粉砕の横断幕 那覇の国映館前」1956年6月【0000108926/058945】
右:「四原則貫徹地区住民大会」1956年6月25日【0000108926/058946】
 1956年(昭和31)6月25日に第2回住民大会が那覇とコザ(現沖縄市)で開かれ、計15万人もの人びとが集まりました。

『プライス勧告とその反論 沖縄軍用地問題』1956年9月【T00021708B】
 四原則貫徹実践本部は、プライス勧告に反論しました。
 
『軍用土地問題の経緯』1959年6月【G80001320B】
 土地問題の解決に至るまでの経緯について記されています。

 1958年6月、第2回土地問題渡米折衝団(当間重剛琉球政府行政主席ら)が現地で米陸軍長官と解決策を協議しました。1959年1月、立法院で「土地借賃安定法」「アメリカ合衆国が賃借する土地の借賃の前払いに関する立法」が成立し、米軍用地問題は一応の決着をみました。軍用地料はプライス勧告時の6倍に引き上げられ、原則として地代は年払い、5年ごとに土地の評価替えをして更新することとなりました。
 島ぐるみの抵抗運動によって米国の政策を一部変更させたことは、住民にとって大きな自信となり、自治権拡大を求める運動の力となりました。

【参考引用文献】
・宮里政玄『アメリカの沖縄統治』(1966年 岩波書店)【T00004098B】
・新崎盛暉『戦後沖縄史』(1976年 日本評論社)【T00019985B】
・安次富哲雄「プライス勧告」『沖縄大百科事典 下巻』(1983年 比嘉敬/沖縄タイムス社)【T00000201B】
・『沖縄県史 ビジュアル版 戦後01 銃剣とブルドーザー』(1998年 沖縄県教育委員会)【G00020919B】
・『概説 沖縄の歴史と文化』(2000年 沖縄県教育委員会)【0000018553】
・沖縄歴史教育研究会代表 新城俊昭『ジュニア版 琉球・沖縄史』(2008年)
・那覇市歴史博物館編『戦後をたどる―「アメリカ世」から「ヤマトの世」へ』(2007年 琉球新報社)